トップページ > コラム > 広がり続ける「広報力」空間 > Vol.11 広報力を維持・拡張させる原動力とは~現場発! 柏崎市「こちょこちょ課」の1000日戦争
本記事は、月刊「広報」連載「広がり続ける広報力空間~広報コミュニケーションの近未来を探る」から一部を抜粋したものです。
2013年9月2日、まだ夏真っ盛りのその日の朝、私は新潟県の柏崎市役所にいた。お気に入りの白いスーツを着て、非常勤特別職「広報専門官」の辞令を受けた。思い返せば、この日が「こちょこちょ課」の1000日戦争の始まりだった。
着任から2か月後(同年11月)にフェイスブックとツイッターの運用を始め、翌14年11月には「柏崎市広聴広報の手引」を作成。同時に、「広報広聴規程」を「広聴広報規程」に改正した。これは、「聴くこと」を重視・優先する会田洋市長の姿勢とも通じる、私のポリシーを具現化したものだ。その結果、翌15年4月には、「広報広聴課」が「広聴広報課」に。課名変更により、職員は電話対応などで「噛みまくり」だった。「はい。柏崎市こうほ……あ、こちょうこちょう課です。あ……」といった具合だ。そのうち、「くすぐったい課名ですね」「いっそ、こちょこちょ課でよくない?」といったやりとりから生まれたのが、愛称「柏崎市こちょこちょ課」だ。
着任当初から、「イベントを取材するなんて無理です!」「SNSなんて見たこともないので、できません!」「それは前例がないので、やめてください!」と言われることの連続だった。取材をしなくて、広報は何をするのか? SNSを見たことがないなら、まずは見てみればよい。前例がないからこそ、やる価値があるのだ。世の中はどんどん動いている。前例踏襲の連続では、世の中から、どんどん離れていく。今までやっていなかったこと、できなかったことをやってこそ、成長できるのだ。「できないこと=伸びしろ」だ。
そこで私は「できない」という言葉を禁じた。「できない」と言うと、「できない理由=言い訳」を言いたくなる。そうではなくて、「どうしたらできるか?」を考える。そして前人未到の世界を楽しもう。職員には何度も繰り返し、伝えた。
人口の多い都市部の大規模自治体とは異なり、柏崎市は、少人数で広聴業務も広報業務も担っている。課員数は、課長を含め5人。さらに、非常勤職員2人を合わせても7人だ。相談・苦情の対応(時には数時間に及ぶ)、市長が市内全地域を回る地域懇談会といった事業もこなしつつ、広報誌の発行、ホームページの更新、SNSの投稿、市長記者会見にパブリシティー……自治体の規模にかかわらず、必要な業務は同じなのに、人数はきわめて少ない。
そこで思いついたのが、広報マインドの高い職員を巻き込むことだ。私の広報研修を受講して「目からうろこが落ちた」職員も、「こちょこちょ課」で一緒に戦って? きた職員も、いずれは異動する。しかし、異動してもずっと、広報マインドを忘れないでほしい。広報パーソンであり続けてほしい。そうなれば、やがて市の職員みんなが広報パーソンになる日も来るだろう。
具体的には、広聴広報課OG・OBと、有志によるフェイスブックグループ「KZ(柏崎の略称)バーチャル写真部」の活用だ。……
※記事の全文は、月刊「広報」2016年9月号でお読みいただけます。
1965年生まれ。中野区(東京都)に15年間勤務し、2007年4月に独立。現在は、国・自治体とその関係団体、大企業など、公益性の高い組織を支援。広聴、広報、クレーム対応の文章術、ソーシャルメディアなどの研修で全国を飛び回る。2013年9月~2016年3月、非常勤特別職「広報専門官」として、柏崎市(新潟県)に勤務。同年4月~17年3月、「広報戦略アドバイザー」として、引き続き広聴・広報業務の指導・助言を行う。日本広報協会・広報アドバイザー。全国広報コンクール審査委員を務める。著書に『誰も教えてくれなかった公務員の文章・メール術』『これで怖くない!公務員のクレーム対応術』(以上、学陽書房)などがある。