ふるさと納税制度の創設に先駆けて2008年4月に開設された全国自治体ふるさと納税応援サイト「ふたくす」。各自治体がふるさと納税に関する詳細情報を投稿という形でアップすることで、全国の納税者に向けて事業の内容や制度をPRできます。開設以来、町村を中心に積極的な投稿が続いています。
「ふたくす」を運営しているのは、NPO法人「NPO支援全国地域活性化協議会」(通称:ありがとうネットワーク)。全国のNPO活動を支援する中間支援組織で、地域貢献の観点から自治体も支援していこうという思いから「ふたくす」を開設しました。「ふたくす」は「FurusatoTAX」と、「自治体に自らの志を付託(ふたく)する」の意から命名されました。
2009年度住民税納付分から開始されることになったふるさと納税制度について、地域振興のために有効に活用されるよう、寄付を募る自治体と、寄付を行う側(納税者)双方を情報面で支援していくのがねらいです。ほとんどの自治体では団体の公式ホームページに専用のコーナーを設けて寄付を募っていますが、それ以外の手段となると難しく、手間もかかります。一方、納税者は、公平・客観的な目で寄付先を選べない、応援したい地域や事業の情報が十分に得られないといった問題を抱えています。『ふたくす』でこうした課題を解消し、ふるさと納税制度がよりよい制度として軌道に乗るよう支援していきたいと思います」(「ふたくす」運営事務局の吉戸勝さん)
仕組みとしては、あらかじめ登録した自治体がふるさと納税に関する情報を「ふたくす」に投稿すると、トップページに新着順で掲載されます。投稿内容は各自治体の判断に任されており、これまで投稿されたケースを見ると、「事業の紹介と寄付の依頼」「自治体の紹介」が多く行われています。納税者などサイト閲覧者は、それら情報を参考に寄付を検討します。2008年9月末現在で75自治体が登録。吉戸さんによると、現在でも週に1件以上は新規自治体登録があるといいます。主に、町村など小規模自治体による投稿が目立ちます。
事務局では、自治体による登録や投稿をさらに期待したいところですが、ここに来て、課題も見えてきました。
「ふるさと納税を担当されている部署はさまざまですが、皆さん、『寄付をもらうため』の情報発信に慣れていない面を感じます。投稿記事を閲覧する納税者の方は、事業の中身を見て寄付するかどうかをじっくり吟味するわけですが、同じようなメニューで情報を出される傾向にあり、投稿記事を読んでもその自治体らしさがあまり伝わってこない例が多々見られます。これでは、なかなか納税者の心を動かすまでには至りません」(吉戸さん)
開設以来の「ふたくす」のアクセスを見ると、ほぼ横ばいで推移してきた件数が、著名人がある自治体に寄付したことが大きく報道されると一気に3倍以上に膨れ上がります。最近では、女優の広末涼子さん(高知市へ寄付)やお笑いコンビ爆笑問題さん(大阪府へ寄付)のケースがありました。
「これは、『ふるさと納税』について詳しく知らない方が、ネット上で検索するなど情報を求めた結果、『ふたくす』へアクセスが集まったと考えられます。こうした傾向から、『ふたくす』へアクセスする方の多くは、寄付する自治体を特に決めていない方や制度をよく知らない方ではないかと推測できます。そうした、かかわりの薄い納税者の方々に、いかにアピールしていくかで、多くの寄付を集めることができるのではないでしょうか」(同)
自治体の規模に関係なく、どの団体も同じ土俵で競争ができる場が「ふたくす」です。
競争を通じて各自治体の企画力や創造力、情報発信力が高まるという効果も期待できます。
「これからは、寄付を募る情報だけでなく、寄付の集まり状況や使い道に関する情報も積極的に出していくべきでしょう。寄付した方はその事業の推移が気になるはずです。継続して情報を出していけば、継続的な寄付のみならず、新たな寄付も期待できます」(同)
事務局では今後、「ふたくす」で蓄積されたふるさと納税関連の情報やノウハウを基に、自治体への各種提案・支援や、自治体関係者と納税者を対象にしたフォーラムの開催なども検討していく予定です。
「トップページ」サイト中央が投稿コーナー。右枠のランキングには、24時間で多く閲覧されたページ上位3件を掲載する。納税者の声(ブログ)や、記事に対するコメントのランキングもある。 http://www.f-tax.jp/ |
(2008年10月掲載)