兵庫県西宮市が運営している『道知る兵衛』は、インターネット上から目的の施設や住所、道順などの検索・案内を行う市内地図案内サービスで、市内をあらゆる角度からくまなく地図検索できるシステムだ。
例えば、住所や場所の名前を入力し検索すると目的の場所が表示され、現在地から目的地までのおおよその距離や所要時間も調べることができる。また、知りたい施設の名称や業種、最寄駅付近などからの○○付近検索など、機能も充実している。NTTタウンページに掲載されている約2万件の施設や店舗なども、業種・名称・電話番号からの検索が可能だ。
『道知る兵衛』には、行政情報システムにおける日常業務データベースを串(くし)刺しにする宛名(あてな)データベースにXY座標を付番するという、西宮市独自の位置座標方式を取り入れた「西宮市地図情報システム(GIS)」が用いられている。これらの考え方をもとに、ウェブを通して市の地図情報を配信できるようにしてきたもの。
1995(平成7)年の阪神・淡路大震災で大きな被害に遭った西宮市は、震災後約1日半という速さで被災者支援を根幹とする「震災業務支援システム」を立ち上げた。一方、西宮市情報センターでは、仮設住宅や仮設庁舎の場所、所在地図などの情報を、ファクスやパソコンなどを使って被災市民に提供するための情報提供ネットワークサービスを素早く構築した。
このときのノウハウや経験・教訓を生かし、さらに内容を発展・充実させて、1998(平成10)年に『道知る兵衛』を完成させた。
「『道知る兵衛』は、西宮市GISの考え方をふんだんに活用しており、応用範囲が非常に広いシステムです。例えば選挙時では自分はどこの投票所を利用することになっているのか、その場所はどこかといった情報も提供することができます。また、緊急時では、災害が発生している場所はどこか、災害時に直近の避難所はどこで、収容人員は何人かなど、さらに福祉関連では、支援を必要としている障害者や寝たきり老人などの災害弱者の状況や所在場所はどこかといった情報もすぐ地図上で分かるようになっています。2001(平成13)年4月から稼動している『地域安心ネットワーク』は『道知る兵衛』のシステムを活用したもので、庁内の福祉・防災・情報という3部門を横断的にまとめたイントラ(庁内)システムです。
広く住民支援を行う上で、『道知る兵衛』を中核とする西宮市のGISはとても有用だといえます」(情報化推進部・吉田稔さん)
シンプルで使い勝手のよいシステムは、ほかの自治体からの注目を集め、現在、京都府八幡市と和歌山県和歌山市で『道知る兵衛』が使用されている。使用に当たっては『道知る兵衛』のロゴと使用許諾のただし書きを明示する条件で、無償での使用が認められている。ほかにも、兵庫県内や大阪府下をはじめ他府県や東京都内の区など十数自治体から使用を求める問い合わせがきているという。
「『道知る兵衛』は、西宮市がシステム構築からウェブ開発まで、すべて自前で制作したもので、著作権は西宮市にありますので、自治体から使用依頼があれば、フリーソフト的に活用してもらえます。
震災のような緊急時には、どれだけ迅速に地域住民を助けられるか、またそのための情報提供を行えるかという点が何より大切です。『道知る兵衛』をほかの自治体でも、住民サービスの向上のために活用していただければと思っています」(吉田さん)
西宮市ウェブサイト |
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西宮市ウェブサイトのトップページ。右上部のボタンから、地図案内サービス『道知る兵衛』のほか、各種検索システムなどが利用できる。 |
「道知る兵衛」 |
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「道知る兵衛」起動画面。画面左の地図には目的地の場所が、右側にはその名称や住所、現在地からの距離などが表示される。 |
(2004年掲載)