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『おしい!広島県の作り方 広島県庁の戦略的広報とは何か?』

「広報」起点による「行政改革」

『おしい!広島県の作り方 広島県庁の戦略的広報とは何か?』
  • 著者:樫野孝人
  • 発行:カナリア書房
  • 発刊:2013年2月
  • 価格:1,260円(税込み)
『おしい!広島県の作り方 広島県庁の戦略的広報とは何か?』表紙

著者の樫野孝人(かしの・たかひと)氏は(株)リクルート出身で、地域開発コンサルティングや映画製作事業などに携わる。実業家としての実績が買われ、2011年5月、広島県広報総括官に就任。12年度からは県のCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める。

本書は、樫野氏が担当したさまざまな事業の事例を紹介しながら、「行政の現場で起きている問題点を整理するとともに、どうやってそれを解決していったのか、どうすれば少ない予算で大きな成果を生む組織に生まれ変わっていくのか、そのための要件は何かを明らかに」している。

そうした事業の1つ、“おしい!広島県”は県が2012年3月から展開している観光プロモーションで、タレントの有吉弘行さんを起用したウェブサイト「おしい!広島県」が話題になった。それら特設ページの出来なども評価され、広島県庁公式サイトは平成24年全国広報コンクール・ウェブサイト部門で特選(総務大臣賞)を受賞した。“おしい!広島県”が誕生した背景や舞台裏については4章のうち1章を割いて詳しく述べられているが、本書は、そうした広報の成功事例の紹介にとどまらない。

「自治体の現場には、真のマーケティング機能が必要不可欠である」と語る樫野氏を中心に、広報課では、マーケティングの視点から各施策を見直した。その数、年間で506本。見直しの軸になったのは、湯崎英彦知事の施政方針をもとに設定した「戦略的広報・5つの基本方針」だ。広報には「部局を横断し、事業の成果が最大化するためには何ができるかを追求する」という役割が求められた。

コンテンツ重視で挑んだ“おしい!広島県”の展開も、利用者目線でリニューアルを図った公式サイトも、湯崎知事と橋下徹大阪府知事(当時)とのイクメン論争をきっかけにネット上の声の流れを読み取りながら子育て施策の充実ぶりを真摯に訴えたのも、すべては戦略的広報の考え方が起点になっている。

見直し作業はスムーズにはいかない。縦割主義や予算主義といった行政の壁が立ちはだかる。時には、職員の消極的な姿勢に激怒しそうになったり幹部職員と激論になったりしたことも。こうした現場でのやりとりから、壁を乗り越えるためには、トップの判断や職員の地道な努力が欠かせないことが分かる。

「人員削減、給与カットとはひと味違う『もうひとつの行政改革』の現場がここにある」と表紙にあるとおり、本書は、広報改革を起点にした行政改革の実践書である。

 

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