著者:川西正幸
日本広報協会・広報アドバイザーで、広報セミナーの講師や全国広報コンクール・写真部門の審査委員も務める川西正幸さん(日本写真家協会会員)執筆・撮影による写真撮影のための実用書です。
「私が提案したい写真の撮り方は、風景写真にも、行き交う人々を入れて有機的な写真にすることです」(「あとがき」より)と語るように、川西さんが常にこだわるのは、「ストーリーのある写真撮影」です。中心になる被写体だけでなく、周りのいろいろな情景にも目を向けることで、全体のバランスを考えた構図のよい写真を撮ることができます。
「たとえば映画やテレビでは、主役に対して準主役や脇役がストーリーを展開し、盛り上げます。1枚の写真も同じように、被写体を主役、準主役、脇役の3種類に区別し、主役が何をしているかが分かるように、それぞれを配置するのです」(「写真がうまくなる」項より)
こうして、「いつ」「どこで」という役割を被写体に当てはめていくことで、自然と、1枚の写真に分かりやすいストーリーをつくることができるといいます。そのための、「撮影目的に合わせたフレーミングの方法」や、「透視法を使った遠近感のある撮影方法」などのテクニックについて、実例写真や図解を交えて分かりやすく解説しています。
本書は、アングルや被写界深度、露出補正など撮影の基本について解説した「写真がうまくなる」と、人物や食べ物、スポーツ写真、景色など被写体に応じてうまく撮るポイントを紹介した「もっともっと美しく撮れる」の2部構成。被写体別の撮影方法では、年齢を感じさせない女性の顔写真や、よりかわいく動きのある子どもの撮り方などが紹介されています。被写体の自然なイメージや躍動感を表現しつつ、かつ、情報の正確性や真摯性が求められる「広報写真」にとって、これら撮影技術や知識は欠かせません。
「どんな被写体でも、感動したら失敗を恐れず撮ること。失敗しても、それが分かることで必ずもう一歩上達します」「被写体に近づき、時には離れ、さまざまな角度から観察し、考えながら撮ることがよい作品をつくる秘訣」など、撮影の心構えに関する解説も、広報写真に長く携わってきた川西さんならではのアドバイスといえます。
海外での撮影経験も豊富で、本書では、10年間、中国の西南シルクロードを旅して撮影した写真も多く使われており、少数民族の生活ぶりなどを作品として楽しむこともできます。