著者は、電通京都支社で35年にわたり、コピーライター、クリエーティブ・ディレクターなどを務めた。京都を中心に企業の広告・広報活動のほか、自治体や大学などの広報活動にも携わり、広告制作と全般のマネジメントを手がけてきた。本書は、それら豊富な経験を基にした、他にあまり例のない広告のクリエーターが著した広告・広報論である。
本書に紹介されている大半の広告・広報作品は、著者自らが制作プロデュースしたもので、それらの作品の多くは日本の代表的な広告賞を受賞している。
本書は第1部「広告」と、第2部「広報」の2部構成。「広報」では「企業広報と行政広報」「広報と広告の違い」「自治体の魅力づくり」「行政広報の実際」「大学広報の実際」などについて述べている。
いずれの章も具体例を示していて分かりやすく、「広報」の基礎を学ぶ上でも参考になる。9章「広告と広報の違い」について、広告が「バイ・ミー(Buy me)“私を買って”コミュニケーション」であるのに対し、広報は「ラブ・ミー(Love me)“私を愛して”コミュニケーション」であるという考え方は分かりやすい。「広報と広告のクリエーティブの違い」では、「広報情報の発信者は、『伝える』ことと『知らせる』ことは、別物であるという意識を持っているだろうか」と疑問を投げかける。「きれい事では届かない」「いかに言うかでなく、何を言うか」――「伝わる」ためのポイントも明快である。