日本広報協会・広報アドバイザーで、茨城大学助教授(地方自治論専攻)を務める著者の最新刊。自治体のインターネットによる広報活動が、年とともにどのように変化し、どのような意義をもってきたのか、また、インターネットを広報活動に生かすことによって、行政広報がどういった意識変革を迫られているかなどについて、実証研究によって明らかにしている。
副題の「一地方県域」とは岩手県のことで、著者は1995(平成7)年4月から2000(平成12)年3月まで岩手大学人文社会科学部講師を務めた。
第1章(1996年調査)、2章(1998年調査)、3章(2000年調査)では、その際に実施した県内自治体に対するインターネット活用に関するアンケート調査の結果をもとに論じている。各自治体の意識把握や、自治体ホームページの観察調査などを行い、それぞれの時点における活用課題を検討している。また、第4章では補論として、1998年に行った都道府県レベルの同様の調査について解説。さらに、最後の終章では、本書の問題設定(コミュニケーション・ツールとしてのインターネット活用に関する時系列的変化など)に関する結論をまとめ、また、自治体におけるインターネット活用の課題や、調査研究における著者自身の課題を挙げ、今後の展望について述べている。
著者は、「インターネットという新しいコミュニケーション・ツールが活用次第では、大きく自治体の(広義の)広報活動を好ましい意味で変える可能性を秘めている」(終章より)と指摘する。