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社会福祉と広報

  • 村井 祐一
    田園調布学園大学教授

社会福祉における広報の位置づけ

1951(昭和26)年に制定された社会福祉事業法から、およそ50年ぶりに全面改正された社会福祉法は、社会福祉を目的とする事業の全分野の共通的基本事項を定めた法律である。この法律では、福祉サービスを利用する者の利益の保護と地域福祉の推進、そして従来の措置ではなく、利用者との契約を基盤とした社会福祉事業の健全な経営を求めており、以下に示す情報提供(広報)に関する条文も存在する。

社会福祉法 第75条(情報の提供)
社会福祉事業の経営者は、福祉サービスを利用しようとする者が、適切かつ円滑にこれを利用することができるように、その経営する社会福祉事業に関し情報の提供を行うよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、福祉サービスを利用しようとする者が必要な情報を容易に得られるように、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 

情報利用者の現状

福祉サービスを必要とする者は、高齢や障害などによって情報収集力や情報判断力、そして情報発信力などに対して、何らかのハンディキャップを持っている場合が多い。このため、社会福祉分野における広報には、一般に情報弱者と呼ばれる人々への配慮が強く求められる。この課題は、情報通信においても同様であり、情報アクセシビリティ(JIS X8341)の向上と、わかりやすいコンテンツづくりが有効である。

また、福祉サービスの多くは対人援助サービスであり、サービス(商品)が形として見えるわけではないため、適切な広報にはかなりの工夫が求められるが、ほとんどの福祉事業者は、この課題に対する有効な手段を見いだせずにいる。

 

適切な福祉広報活動への取り組み

社会福祉領域における適切な福祉広報は、模索段階ではあるが、近年、ホームページや広報紙を積極的に発行し、利用者および家族、そして地域社会に対して、積極的な情報提供に努めようとする施設は増えつつある。また、全国老人福祉施設協議会では、毎年広報コンテストを開催し、「ホームページ部門」「施設パンフレット部門」「施設広報紙部門」の各部門における審査と表彰を行っている。

2006年度からは、介護サービスの情報開示の標準化(第三者評価)が、介護保険の新たな制度として開始され、福祉サービス提供事業者の自己情報の発信(広義の広報活動)に対する責務も強まっている。

このような流れは、社会福祉領域における広報が、サービス利用者の権利を保障し、サービス提供事業者の社会的な信頼獲得の重要な要素であると認識され始めたことを意味している。福祉広報は、今まさに変革期を迎え始めているのである。

 

むらい ゆういち
1967年生まれ。田園調布学園大学人間福祉学部地域福祉学科教授。「社会福祉情報論」「地域福祉活動計画と情報」などを担当。
著書は「社会福祉・介護事業現場における個人情報保護と情報共有の手引き」など。

 

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