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アクセシビリティの手法と本質

  • 清家 順
    ユニバーサルワークス代表取締役

ウェブアクセシビリティの配慮が進み始めている

ウェブ上でアクセシビリティが確保された状態とは、身体能力や障害の有無、使用機器・環境の違いにかかわらず、できる限り多くの利用者が等しく情報が得られる状態にほかならない。2004(平成16)年6月に公示された「JIS X 8341-3:2004 高齢者・障害者等配慮設計指針 -情報通信における機器・ソフトウェア・サービス - 第3部 ウェブコンテンツ(以下、JIS)」の影響によって、都道府県を始めとした規模の大きな自治体では「アクセシビリティ」という言葉が見られるようになり、実際に、各ページにおけるアクセシビリティへの配慮が進み始めている。しかし、「地方公共団体におけるウェブサイトの企画・運用等に関するアンケート※」では、人口1万人未満の規模の小さな自治体のうち4割程度が、アクセシビリティについて「必要性はほとんど認識されていない」と回答している。

※資料:総務省「地方公共団体におけるウェブサイトの企画・運用等に関するアンケート

 

すべての住民が行政サービスを等しく受けられる配慮を

住民の暮らしにかかわる情報は、都道府県ではなく市区町村に集約しており、市町村サイトのアクセシビリティは、そこに暮らす障害者・高齢者の生活の質に直接影響する可能性が高い。単なる情報提供にとどまらず、日々の暮らしにかかわる手続きや申請、投票、納税などウェブサイトを介した様々な行政サービスの提供が進んでくれば、アクセシビリティが確保されないことで、住民の権利そのものを奪ってしまうことにもなりかねない。すべての住民が行政サービスの恩恵を等しく受けることができるよういわゆる「ホームページ」だけではない部分も十分な配慮が必要となってくる。

 

コンテンツの表現にはまだ問題がある

ウェブアクセシビリティへの取組はまだ始まったばかりと言えるが、それでも、昨年から今年にかけてJIS対応・JIS準拠をうたうウェブサイトもいくつか誕生している。JIS対応をうたうだけあって、音声ブラウザを始めとする各種環境に十分対応できるだけの手法が用いられてはいるが、コンテンツそのものの表現には「?」をつけたくなることがある。某市サイトには「身体障害者手帳」のページに「身体に一定の障害のある方に対し、障害の種類や程度を明記した手帳を、申請により交付しています。」としか記載がなかった。JISに示される「手法」は十分理解したのだろう。だが、その前に「情報」とは何なのか、どこに向けてアクセシビリティを確保するのか、考えてみる必要があるのではないだろうか。

せいけじゅん

1975(昭和50)年生まれ。ISP(インターネットサービスプロバイダ会社)勤務を経て現職に。専門は、Webアクセシビリティ(自治体Webサイトのバリアフリー度を調べる「Webアクセシビリティ調査」、Web制作 等

 

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