トップページ > コラム > Net de コラム > Vol.25 コミュニケーション力とは」
例えば、知り合いから「彼女(彼)はどんな人?」と聞かれたら、どう答えるだろうか。やおら、デジカメ付きの携帯電話を取り出す人もいるかもしれない。
この場合、「どんな人?」とは容姿として理解されている。百聞は一見に如(し)かずというわけで大変分かりやすい。ただし、写真(外見)だけでは、どんな人なのかよく分からない。逆に、言葉の説明だけで、その人をイメージするのにも限界がある。
これは、文章と写真、デザインの関係に似ている。掲載する文章や写真を個別に見せられても、全体をイメージできない。
私たちはメディアの特性や掲載スペースなどに応じて、伝えたいことを適切に表現する必要がある。その調整機能、情報伝達を最適化するものとして編集、デザインがあることを改めて思いたい。
この話には続きがある。
写真を見ながら、説明されても十分とは言えないことがある。今ではホームページから、文章、写真を含め多くの情報を簡単に入手できるようになった。「わざわざ取材しなくても、これで十分」と思い、なかにはWeb情報を元に原稿をまとめる人までいる。しかし、それは既に共有化された情報であり、お見合い写真だけで結婚を決めるようなものである。
対象が人であれ、土地であれ、直に接することの意味は大きい。その場に身を置くことで、紙面のイメージが膨らんでくる。資料で得た知識を、さらに掘り下げて理解できるし、資料には書いていないライヴな情報を入手できることもある。そして、何よりも人的なネットワークができる。
取材で手応(ごた)えを得ても、次に文章化の作業が待っている。原稿を書くことは、文法うんぬんや、分かりやすさだけでは済まない。写真にレンズやアングルの選択があり、同じ被写体でも違って見えるように、切り口、構成、文脈、単語一つで訴求力が変わる。ただ、取材したことで背中を押してくれるものがきっとあるはずだ。
時にはパソコンから離れてフィールドに踏み込み、対話を交わし、人に伝えるという一点にこだわり、工夫すること…そうした積み重ねの中からコミュニケーション力も強化されるのだと思う。
よしむらきよし
1953(昭和28)年生まれ。取材記者、書籍編集を経て現職に