トップページ > コラム > Net de コラム > Vol.18 合併の成否、広報にも
わがまちの将来の選択について民意を問う住民投票が、全国各地で相次いでいる。「衆愚政治になる」と住民投票を嫌う首長もいるが、生活を大きく左右する自治体再編の動きに対して住民が1票を通じて判断する有力な手段であり、市町村合併特例法は素晴らしい制度をつくったと思う。「平成の大合併」が今後、加速するか否かは、住民投票の結果にかかっているといっても過言ではない。
懸念される最近の特徴は、住民から「合併ノー」を突きつけられ、自立を決め込んだり、法定協議会から離脱する自治体が際立ってきたこと。指摘したいのは、広報は十分だったか、住民への説明はしっかりなされてきたか、ということだ。自治体によっては、投票前の住民説明会用にと「合併しない場合」と「合併した場合」の二通りのパンフレットを作成、家庭に配布するなどPRに努めているところがあり、好感がもてる。
合併しない場合には、水道料金、保育料、国民健康保険税など住民負担増の必要性や、赤字解消のため大幅な行政サービスの低下を訴え、職員の給料カットや収入役の廃止、議員定数の削減などが必要と住民の協力を呼びかけている。一方、合併した場合、新自治体全体で合併後10年間の赤字累計額はどうなるかなど財政推計を紹介。住民にとって、負担減になる、サービスが良くなる事業数を示す一方で、負担増になる、サービスが低下する事業数を例示するなど合併後の姿をきちんと説明している。合併しないという選択なら、それ相応の覚悟が住民の側にも必要だと訴えているわけだ。
合併にはメリットもデメリットもある。メリットばかり強調するのは邪道だ。中心部は発展するが、山間部は衰退するとは合併後にありがちな現象。こうした住民の心配ごとにも積極的に応じる姿勢が広報には望ましい。大事なことは合併に関する一切合切を包み隠さず広報すること。十分な広報を展開した上での住民投票で「合併賛成」なら文句なし。「合併ノー」の結果が出れば、民主主義だから住民の意思を尊重すべきだ。合併協議が最終局面に入ると、住民投票が行われるのが通例だが、それより以前の住民への広報が大切だと言いたい。
1940(昭和15)年生まれ。時事通信社内政部長、横浜総局長、名古屋支社長、出版局長などを経て現職に