トップページ > コラム > Net de コラム > Vol.15 新たな“地域メディア”への試み
大学における、私の研究テーマは「メディア・コミュニケーション」である。対象の一つは、制作者として23年携わってきたテレビというメディア。そして、もう一つがインターネットだ。「ブロードバンド時代」に入って、文字だけでなく、映像や画像も容易に送受信できるようになり、インターネットの使い方も大きく広がっている。その中で、私が注目しているのは“地域メディア”、もしくは“市民メディア”としての「地域ポータルサイト」だ。
ポータルサイトというのは、パソコンを起動させたとき、最初に出てくるWebサイトのこと。いわばインターネットの「入り口」に当たるが、大手の検索サイトを利用している人が多い。ただ、それでは自分が欲しい「地域情報」にたどり着くのが結構大変だ。そこに地元の情報に特化した地域ポータルサイトが活用される余地がある。
テレビは、膨大な数を相手にした「マス・メディア」だ。もちろん、各地方の放送局が制作する地元住民のための番組はあるが、市や町の身近な日常情報までは収容できない。また、ケーブルテレビが地域メディアの役割を果たしている市町村も全国にあるが、それでも十分とは言えない。
そこで、地域ポータルサイトを活用して、地域のメディア、市民のメディアを作り上げたいと思っているのだ。たまたま、大学のある千歳の街にはケーブルテレビがない。市民、行政、大学が連携して、新たな地域メディアを構築・運用するには最適な環境だった。
昨年(2003(平成15)年)から、学生たちと共に『ハロー!ちとせ』という地域ポータルサイトを開発している。ここには、市内の商店のオリジナル・ホームページが並ぶが、それは学生たちが各商店主と話し合いをしながら作成したものだ。いずれは、同時開発の千歳ヴァーチャル・モールとも連動させ、パソコンで買い物ができるようにする予定だ。地域の「観光情報」も、学生たちが自分たちで取材し、“時間別”や“目的別”コースなどユニークな見せ方で紹介している。また、ワードやエクセルなどのソフトが学べる電子教材も作って、「学ぶ」というコーナーに置いている。すべてがゼロからの手作りだが、特色は研究室の中だけでなく、学生たちが街へ出て行き、街の人たちと接しながら構築していることだろう。そんな“生きた研究”を目指している。
現在、この『ハロー!ちとせ』は試験運用を行っている。実際に市民の皆さんに使っていただきながら、進化させていくつもりだ。今年8月に完成する大学院棟の中にはスタジオも設置するので、リアルタイムのインターネット放送も可能になる。市民が自ら情報発信できる“ベース基地”になればと、今から楽しみだ。
1955(昭和30)年生まれ。長野オリンピック開閉式プロジェクトやゲームソフトのプロデュースなどを経て現職に。千歳科学技術大学光科学部光応用システム学科助教授。