トップページ > コラム > Net de コラム > Vol.6 写真の上達は基礎を知ること
広報担当者は様々な写真を撮る機会があります。ファインダーを覗(のぞ)き被写体になる主役だけに目を向け、安易にシャッターを押しても無機質な写真になり、読者に感動を与えることはできません。例えば、公共施設を主役に利用する市民の笑顔を脇(わき)役にして、祭りに参加する市民の喜怒哀楽を主役に観客の笑顔を脇役にします。主役と脇役を組み合わせて一枚の写真を構成します。広報写真は市民の表情をプラスすることで、生き生きとした紙面づくりができるでしょう。
広報写真の撮影方法は、週刊誌や月刊誌と同様に35㎜カメラを使って、速写性を要求されるスナップ撮影技法です。速写をすることは、ファインダーを覗き、思いつきで連写をするという意味ではありません。
カメラは単純な道具ですが、シャッターを押してもそんなに簡単には写りません。写真は「写る」のではなく、カメラマンの思い込みを「写す」、写し込むことが大切です。最初から写真に才能がないと思っていては何も見えなくなります。技術的な基本を知ることで様々な世界がファインダーの中から見え、個性的な写真が撮れるようになります。自分自身が妥協をしてはなにもスタートできません。
写真は現場で足し算、選びは引き算といわれていますが、撮影現場では様々な角度からより多くの興味のあるカットを計画的に撮影して、写真選びは同じ系列の中から一番良いものを選びます。良い写真が多く撮れても同じような写真を何枚も掲載しては、写真同士ケンカをして単調な紙面になってしまいます。思い切りが必要です。
撮影を始めると会場の雰囲気に圧倒され、集中力を欠きパニックになることはありませんか。どんな撮影にも前日にイメージを膨らませ、何を撮るかをノートに書いておきましょう。撮影当日には1時間前に現場に着き、ロケハンを始めます。どんな順番でどんな写真を撮りたいなどと考えながら、肉眼で見るだけではなくファインダーを覗き確認をします。
毎年のことだから知っているでは、より良い取材撮影はできません。毎年天候も太陽光線も違います。新鮮な視点でロケハンをしてください。
カメラアングルは写真表現を豊かにしてくれる簡単な技法です。広報紙によく見かける失敗は、シャッターチャンスは良いのに、立ったままの目線(アイレベル)で撮り、アングルの変化が乏しく単調に見えてしまうことです。
高・低のアングルに決まった定義はありませんが、高いアングルからは広さや遠近感を表現し、低いアングルはワイド系レンズで被写体に近づき迫力を出すことができます。アイレベルで撮っても、同じ世界を市民も見ていて感動はありません。アングルの変化で心地良い違和感を出すよう心がけたいものです。
シャッターを押す前に、これで良いのか大いに不安になり悩むことです。あまり神経質になることはありませんが、一番注意することは狭いファインダーの中に邪魔者はいないか、中途半端に建物や人が入っていないか四隅をしっかりと確任します。試行錯誤していかに簡素化したファインダーワークをするかが素敵な写真が撮れる一歩と言えるでしょう。
かわにしまさゆき
1948(昭和23)年生まれ。日本写真家協会会員、全国広報コンクール写真部門審査委員。大阪万博博覧会ドイツ館フィルム映像ディレクターなどを経て現職に
※2023(令和5)年逝去