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使いにくくないデザイン

「ユニバーサルデザイン」という言葉がある。1980年代にノースカロライナ州立大学の故ロナルド・メイスが「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品・建築・空間をデザインすること」として提唱したのが始まりだ。現在の日本でも、この概念にならい「多くの人にとって使いにくくないもの」を目指して数々の製品がデザインされている。プロダクトとして非常に美しいものも多い。

Webサイトはどうであろうか。地方自治体や医療機関など老若男女できるだけ多くの人に情報を届けたいサイトの場合、やはりこの「使いにくくない」が重要なポイントとなる。Webの場合「ユニバーサルデザイン」と同じような意味で「アクセシビリティ」という言葉がよく使われる。文字の形や大きさ、また表示の速度や表示方法まであらゆる技術を駆使して、様々な身体的個性をもった多くの人にとって「使いにくくない」ようにしていく。

例えば視覚障害の人は「音声ブラウザ」などを使って内容を音声に変えて聞くことができる。ラジオのニュースのように滑らかに読み上げてくれればもっと「使いやすい」のだが、実際そこまでの対応は難しい。内容が伝わることのほうに意味があるのだ。色覚障害の人に向けては特に色の「明度」に留意する。色には「明度」「彩度」「色相」の3要素があるが、濃淡にかかわる「明度」に留意することで、対応できる。他にも「アクセシビリティ」、つまり「情報の届きやすさ」を丁寧にみていくと相当数のチェック項目が存在する。

Webがメディアとして成立し続けるためには、なにより利用者の能動的な行為が必要である。彼らは意思をもってサイトを訪れるが、一瞬の判断でいともたやすく別のサイトへ行ってしまう。読みにくく分かりにくいサイトであればなおさらだ。よしんば強い動機から目や頭を疲れさせながらガマン強く読み進めたとしても、次にこのサイトを訪れるはいつのことやら…となってしまう。

「使いにくくない」サイトには「アクセシビリティ」という概念が必要不可欠なのである。さらに質の高いサイトを目指すなら、これにグラフィカルなデザイン・プロセスが必要になってくる。色彩・レイアウトなどが美しく調和し、内容に合ったリズム感が醸し出されていると、サイト全体の信頼度がより高く感じられる。しかし、やり過ぎれば逆効果になることもある。「使いにくくない」をデザイン基盤とするバランスのとれたWebサイトが求められていると言えよう。

わたなべとしゆき

デミクス代表。Web・情報デザイナー。日本広報協会広報アドバイザー。1962(昭和37)年生まれ。社会保険庁、シャープ、NTTデータ通信、東京電力、キヤノンなどのCD-ROMやウェブサイトのインターフェースデザインを数多く手がける

 

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