トップページ > コラム > 広がり続ける「広報力」空間 > Vol.14 その「広報力」は人々の心を動かしているか~「広報力」を常に評価し続ける視点と方法の提案
本記事は、月刊「広報」連載「広がり続ける広報力空間~広報コミュニケーションの近未来を探る」から一部を抜粋したものです。
これからの行政は「自治体行政」から「地域価値経営」へと軸足を移していく必要があると考えている。となれば、まずは「地域の価値」を正しく評価し、その増減・変容の推移をしっかり把握しておくことが求められてくる。その上で、経営目標(ビジョン)の設定から、経営資源調達、経営戦略策定・推進、成果の指標化、経営計画の具現化までのプロセスを踏んでいくわけだが、広報はその全体の推進力として機能することになる。まずは、その全容を十分認識しておく必要がある。もちろん、その場合の「顧客」であり「協働者」ともなるのが、地域内外の市民であり住民であることは言うまでもない。
では、その「顧客」「協働者」は、当該地域を、普段からどのように評価しているのか。どのように見て、どのような感慨を持っているのか。それを知ることが、もう一つの重要課題であり、出発点となる。ここまでが、広報評価以前の前提認識である。これが客観的かつ統計的に整備されていることで、以降の広報効果測定が、極めて効果的・効率的に展開できることになる。
ここで、あえて「協働者」と書いたのには意味がある。言い換えれば、当該地域をよく知る「地域オピニオンリーダー」をイメージしてのことである。彼らをしっかりネットワークすることで、広報効果測定の精度を格段に高められると確信している。企業経営で言えば、普段から広範な企業の活動に関心が高く、ある程度客観的に当該企業の評価ができる「ビジネス・オピニオンリーダー」の存在ということになる。彼ら自身を調査対象とすることで、より一層、問題の本質に迫りうることは、かつて私が所属していた電通で開発した『BOL調査』の実績が、これを実証している。
ここまで述べてきたことに通底する、二つの要件がある。第一は、昨今の行政課題のすべてが、「量から質へ」の転換を迫られてきているということである。おしなべて、より多くの住民・市民にではなく、生活環境の異なる一人一人の要請にどう応えていくかへと、明らかにシフトしてきている。それは、広報効果測定にあっても同様である。「量の評価」から「質の評価」へという流れである。こうした要件を、これまでの方法論にどのように取り込んでいけるか。繰り返すが、「地域オピニオンリーダー」の声の集約は、まさに「質」に対応している。英知を集めて、ぜひ深めていっていただきたい。
第二は、(第一とも関連するが)「自分ごと化」という観点である。これについては、本シリーズの中でも多くの筆者が指摘されている。広報テーマを、どれだけ市民・住民の「自分ごと」として認識させられるかが、これからの広報の本質であり課題であるという論調である。まさにそのとおりであるが、これに職員の皆さんの「当事者意識」も加えておきたい。広報・広聴は、言ってみれば市民・住民とのコミュニケーションである。相手(一人一人)が「質」を求めているのであれば、やはり「質」で応えるのが本道である。だからこそ「心を動かす」ことが可能になる。
※記事の全文は、月刊「広報」2016年12月号でお読みいただけます。
株式会社電通でコーポレートコミュニケーション、ブランド戦略、地域活性化、行政広報のプランニングおよびプロデュースを数多く担当。2006年コンサルティング会社を設立。企業経営、地域経営、行政経営の領域において、コミュニケーション(広報広聴)を基軸とした問題解決を幅広く展開している。専門は、地域活性化、企業・自治体等のCI、コミュニケーション面からみた文化戦略の企画・立案など。日本広報協会・広報アドバイザー、全国広報コンクール広報企画部門審査委員などを務める。著書に『広報力が地域を変える!』(日本地域社会研究所)