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石原信雄の時代を読む Vol.19

自公政権に望む

透明性こそ政治に対する信頼の基礎

平成25年末、東京都民だけでなく国民全体が衝撃を受けた出来事がありました。それは東京都知事の猪瀬直樹氏が、都知事選挙に立候補するに当たって医療法人「徳洲会」グループから5千万円の資金供与を受けたという問題に関連して、都知事を辞職せざるを得ない事態に立ち至ったことであります。

猪瀬氏は1年前の都知事選挙で433万票という歴代最多の得票をもって知事に就任し、その後、精力的に都政を運営しました。中でも2020年オリンピックの東京招致に成功するなど、かなり成果を挙げたと見られておりました。

ところが、その猪瀬氏が1年前の知事選挙で5千万円の資金提供を受け、そのことを公表していなかったというのは誠に残念であり、依然として政治と金の問題が根深く残っているということを痛感させられた出来事でありました。政治資金の透明性については、それが政治に対する国民の信頼の基礎になっているということを、公職にある者は心してもらいたいものであります。

 

自公政権に望みたい財政の健全化

ところで、自公政権は25年7月の参議院選挙で安定多数を確保し、いわゆる衆参のねじれ現象は解消されました。そして、現状では向こう3年間、国政選挙はありません。我々国民は、このような安定基盤の上に立つ自公政権に対し、当面する諸懸案に大胆に取り組んでもらいたいと思っています。難しい問題であればあるほど、政権基盤が安定していないと実現できないことが多いのです。

我が国にとって当面の緊急課題は、財政の健全化でありましょう。日本経済は昨年来のアベノミクス効果もあり、目下、順調な景気回復の動きを見せており、長い間苦しめられた円高、株安、そしてデフレスパイラルからようやく脱却しつつあります。最近は大企業のみならず中小企業も将来の経済に明るい見通しを持てるようになり、設備投資も徐々に回復しつつあると言われています。

このように明るい兆しの見える日本経済ですが、実はその背後にある財政の問題は依然として深刻な状態のままなのです。

 

1千兆円を超えている政府の長期債務

平成26年度予算編成において、政府は国債発行額を従来よりも減らしました。そして消費税の税率も、法律で定めたとおり4月1日から5%から8%に引き上げることも決定しております。さらに、歳出の面では社会保障費の増加に対応しつつも、全体としては健全化に配慮した形跡がうかがえます。

しかしながら、国債・地方債を含む政府の長期債務は1千兆円を超えています。GDPに対する比率は200%を超して、先進各国の中では飛び抜けて悪い状態になっております。当面は、景気回復の流れをいかに維持するか、そのためにいかに効果的な成長戦略をどのように実行に移すかということが課題でありますが、同時に日本の財政が極めて異常な状態にあるという現実は忘れないでもらいたいと思います。

 

社会保障制度の効率化は喫緊の課題

「社会保障と税の一体改革に関する法律」の規定によれば、平成27年10月から消費税率は更に2%引き上げられることになっています。この点については、平成26年度後半の経済状況をみて最終判断すると言われていますが、日本の財政の現状からするならば、たとえ税率を10%に引き上げたとしても、問題は解決せず、さらにその先の健全化措置が必要であるということを念頭に置いて政策運営をしてもらいたいものです。

財政運営に当たっては、将来の懸案要素を少しでも取り除くことが必要であり、それは政権基盤が強くないと出来ないことであります。自公政権はその意味で、国民の期待を裏切らないように頑張っていただきたいと思います。

年金や医療、介護を含む社会保障制度については、これまでもしばしば論議されてきました。高齢化の進行によって、現行制度を維持するだけでも毎年度1兆円以上の自然増が生じてまいります。この春、消費税率を3%引き上げたとしても、社会保障費の増加への対応は決して十分ではないことを念頭に置きながら、社会保障制度の効率化の問題に真剣に取り組んでもらいたいと思います。

 

日本企業の国際競争力低下に歯止めを

また、気になるのは、日本の貿易収支が過去最長の15か月連続の赤字を記録し、慢性化していることです(2013年10月現在)。その大きな原因の一つは、原子力発電所の停止に伴う化石燃料の輸入増加でありますが、さらに心配なのは日本企業の国際競争力が構造的に落ちていると指摘されていることです。この点については官民を挙げて真剣に取り組んでいかなければならない課題でしょう。

東日本大震災からの復旧・復興に関してはいろいろな問題がありますが、何と言っても最大の課題は福島第一原発の事故に伴う汚染処理についてであります。この問題に当たっては、放射性物質を含む「指定廃棄物」の処分場の確保など、切羽詰まった問題が控えております。処分場の問題は、もちろん関係地域の住民の同意を前提とするのが本来でありますが、どうしても同意を得られない場合には政府の責任において最善の策を講じる、決断の時期が来ているのではないかと思います。

 

大切なのは関係国の不信感を取り除く

最後に安全保障の問題であります。残念ながら中国・韓国との関係では、各国間の相互の不信感を払拭するに至っておりません。もちろん我が国はその主権を守るため、領土を守るために必要な安全保障措置を講じなければなりませんが、同時に関係国との関係修復にあらゆる面で努力をすべきではないかと思います。

国家安全保障会議設置法が成立し、またその活動を担保するための特定秘密保護法も成立しました。その運用を的確に行うよう努力していただく必要がありますが、最も大切なことは、中国や韓国を含む関係国の我が国に対する不信感をいかに取り除くかということであります。政権政党である自民党と公明党には、この点についての更なる努力が望まれます。

2014(平成26)年1月掲載

 

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